間違い電話で怒られた時の話
僕は電話が苦手だ。
高校生になって携帯を買ってもらったばったかりの時に深夜に鬼のように電話がかかってきたことがあるからだ。この"怒涛のコール"を"ドトール"と略すとちょっとオシャレな雰囲気が出る。
4コール目くらいだっただろうか。
当時から友達が少なかった僕は電話番号を家族くらいにしか教えていなかったので、隣の部屋で寝ている家族の緊急事態かもしれないとビクビクしながら出た。
電話の向こうは活気のある場所のようで、ゲラゲラとおどけた笑い声が聞こえてきた。
未成年でも分かる。これは酒の席かドラッグパーティに違いない。
でなければ大の大人がふざけて波田陽区の真似なんかしない。大人になってから分かったが常にふざけている人間は一定数いる。
そのBGM: 喧騒.mp3をしっとりと聴いていたのも束の間、
『もしもしケンタぁ〜〜?』
とキャピキャピしたギャルが話しかけてきた。語尾にハートマークを3つくらいつけて書き起こしてもいいようなテンションでだ。純真だった僕は今までの人生でギャルに話しかけられることがなかったのでドキッとしてしまった。
でもよく考えてみたら僕はケンタではない。
夜中に電話で起こされた僕、
僕をケンタと呼ぶ見ず知らずのギャル。
怖くなったので僕は電話を切りたくなったものの、かけ直されそうな予感がしたので勇気を振り絞って言った。
「あの、ケンタじゃないです。」
その瞬間にギャルが豹変した。なんだか電話先で怒っている。"激おこ"なギャルの声と笑い声が交互に聞こえた。
『ちょっと、ケンタじゃないじゃん』
という言葉しか聞き取れなかったが、ケンタという単語がひとりしきり飛び交った後、プツンと電話が切れた。
僕はそこで間違い電話だったことに気がついた。このギャルに間違い電話童貞を奪われてしまったのだ。
何故僕が深夜に電話で起こされてギャルの怒声を聞かなければならなかったのだろうか。そう、それは間違い電話だからだ。
基本的に僕は怒ることと怒られること、そしてそれを見ることが嫌いだ。僕は結構根に持つタイプなので今だにあのギャルを許していない。
それからというものの、見知らぬ電話番号から着信があったら1回目はスルーして電話番号をjpnumberで検索することにしている。電話番号で検索すれば口コミ評価がわかる電話番号レビューサイトだ。迷惑電話なんかは口コミが多く寄せられて、ちょっとした人気者となっている。
そして個人の電話番号だったら大体非通知で折り返している。
ちなみに今時の固定電話には迷惑電話対策機能が付いているらしく、固定電話が必要になったらこういうのを買おうと思っている。
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電話は顔が見えないので相手の感情が分かりづらい。あのギャルはどんな顔で電話をかけ、どんな顔で怒っていたのだろうか。どんな美人だったのだろうか。
そして何故深夜にケンタッキーを注文しようと思ったのだろうか。
相手の知らない番号から電話をかけるなら留守電を入れよう。